飲食店が男女別料金を設定した場合に発生する人権侵害の問題について

2025/1/29

昨年、とある焼肉チェーン店が「女性のみ半額」というキャンペーンを実施しました。

このキャンペーンは良い意味でも悪い意味でも世間の耳目を集めたのですが、私はその際にこれがきっかけで人権侵害を受けることになってしまったというお話です。


私は身体の性別が男性で、性自認もおそらく男性ですが、日ごろから「女装」もするし「女声」も出せるのですが、そんな存在が妻(女性)と一緒に、某焼肉チェーン店の女性半額キャンペーン実施時に店を訪問したところ、予約や会計処理等をすべて妻が実施し、店員による特段の性別確認もなく、半額料金が適用されて会計処理が終了したという話です。

これをTwitterに書き込んだところ「詐欺ではないか」という指摘が複数あったのです。

確かに言われてみると、男性であるにも関わらず女性料金を適用させるために「人を欺いて財産上の利益を得たり、他人に得させたりする犯罪」を行ったとも捉えられかねないために、某チェーン店の本部に問い合わせを行いました。ただ、自分もただ単に好きな恰好をして行っただけで、欺いてやろうと思ったわけでもないので、これで犯罪者扱いされるなら非常に困る話です。好きな服を着て飲食店に行っただけで犯罪が成立するってどういうことなんでしょう。というより、好きな服を着て飲食店に行って、その店員が指定した料金を払っただけで犯罪者扱いされるということ自体が非常に不愉快です。


それで、問い合わせの結果なのですが、いったん責任者より回答するという回答がありました。ただ、「詐欺ではない」ということだけはおっしゃっていました。


その後、店舗責任者から電話があったのですが、驚くべき内容でした。


どんなことを言われたかというと、店舗マネージャーは「私のことはもともと男だと思っていたが、店員がミスして女性料金を適用させた」 と説明したのです。

これには私は非常にびっくりしました。もし私の内心が「女性」だった場合、いったいどれだけ傷つくか想像つかなかったのでしょうか。あるいは、私の内心が「男性」だったとして、「あなたの容姿や振る舞いは男性的です」と第三者から評価されたことになります。これは、私はミスジェンダリングの一種だと思われ、深刻な人権侵害であると受け取りました。

ですので、こちらからその旨を申して、再度回答をいただくことになりました。

この問題はかなり深刻で、埼玉県の条例を考えてもあってはならないものだと思われます。


そして、結局最後の回答としては、「当時接客したアルバイト店員が不在のため、詳しい事情は分からない。しかし会計上そのように処理してしまったのは焼肉店側の処理の問題であり、それに関しての返金は求めない。」というものでした。


しかしですが、その過程に深刻な人権侵害が生じていたのは事実であり、これはトランスジェンダーやクロスドレッサーにおいて、男女別料金が設定されると、当人が犯罪者になるのか、あるいは性自認か身体的な性を強制的に告白させられるか、といった深刻な問題が生じるという話です。

私は焼肉チェーン側に対して「表現する性」も「性別」の一種として取り扱うならば整合性はとれるがどう考えているのか?とも問い合わせていましたが、こちらに関する返答は特にありませんでした。

「性別」の定義にもし「表現する性」が含まれるならば、今回のような問題は起きないわけです。

ただ、そもそもにおいて、他者が他者の性別を判断してそれを本人に告げる、という仕組みそのものが人権侵害的であり、 男女別料金を設定するならば、本人の自己申告にすべきではないかと思うところです。


トランスベスタイトはセクマイの一種なのかどうなのか怪しいところではありますが、とはいえ表現する性は自由であってよいし、それによって性自認ないしは身体性の告白が強制されるようなことはあってはならないと思われるところです。

だとするならば、①性別は自己申告とする、②表現する性も「性別」として取り扱う、のどちらかでしかないと思います。

しかし、よく考えてほしいのですが、焼肉店の店頭で男女どちらかを店員が判断しているときは、その人の「見た目」で判断しているのですから、当然「表現する性」によって判断していて、それが概ね多くの場合では、「性自認」=「身体性」=「表現する性」になっているだけに過ぎないという話でしょう。

ですから、男女別キャンペーンを実施しようとしている事業者については、人権侵害にならないように、そもそもそのキャンペーンにおける「性別」の定義とは何なのか、性別はどのようにして判断されるのか、を明確にして、このようなマイノリティが困難に直面することのないように取り計らって頂きたいです。

バナーリンク
全国児童養護施設総合寄付サイト

コメントを投稿

0 コメント