なんの話かというと、2024年11月12日に、少女ヌードビデオをウェブサイト「少女ヌード写真集」に公開して埼玉県警に逮捕された立石憲彦氏に関して調べていたところ発見した、彼のウェブサイトについてである。
報道によればサイトはすでに閉鎖されているとのことであったが、同日、この事件を調べていたところ、検索エンジンに彼のサイトと思われるサイトがヒットし、少女ヌード写真集のデータが(立石氏の配慮で局部にモザイクがなされているが)公開されているのを確認した。
もし警察が少女ヌード写真集を児童ポルノとして認識しているならば、サイトはすべて閉鎖されるべきところ、そうでもない事が気になって、私は埼玉県警の通報フォームに、当該サイトがまだ存続していることを通報した。
結果として2024年11月19日に埼玉県警から上記の通りの連絡があった次第である。
しかし、サイトは電話のあった後も依然として公開されており、少し調べてみると、どうやら一部の「動画」だけ削除されているようであった(なおサイト上の動画については性的なシチュエーションは事前に立石氏がカットして公開していると記述がなされている)。
確かに、報道を調べてみても、容疑としては「動画」としか記述されておらず、写真集についての記述はないのである。
つまりであるが、警察の認識として、このサイトに掲載されているような少女のヌード写真は児童ポルノではなく、一部の動画については児童ポルノに該当すると考えているらしいことがわかる。
児童ポルノ禁止法が施行された当時、それまで公然と売られていた写真集、特に大ヒットした『Santa Fe』(宮沢りえ)の写真集を所持するだけで逮捕されるのではないか、あるいは自分の子供が裸で水浴びしている様子を撮影したものが処罰されるのか、といった議論が沸き起こっていたように記憶しているが、どうやら実際はそうではないらしい。
児童ポルノ禁止法の3条3号の定義は「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」となっているが、コケティッシュな要素が含まれているようであっても、芸術目的であるヌード写真はどうやら、ポルノに該当しないということらしい。
しかし逆に、当時販売されていたVTRの一部については、性的なVTRとみなされてポルノに該当すると埼玉県警は考えているようである(しかし、サイトを見る限り該当しないと考えられているVTRもあるようである)。
これはある意味で「筋」が通っているようにも思え、仮に児童の裸体をすべて違法としてしまったような場合、ルイス・キャロルが撮影したロリータヌードも違法ということになってしまうし、西洋絵画のモチーフになっているような少女像、あるいは少年をモチーフにした天使の像も概念的に違法という話になってしまう。現代の美術にしても、子供の裸体が映り込んでいるようなものは存在しているような気もする。実写と二次元という話よりはむしろ、「ポルノ」とは何ぞやという話である。
芸術の観点からすれば、子供あるいは少女(少年でもよいのだが)の身体の美というのはあるだろうと思われるし、過去には無垢の表現として子供の裸体はモチーフとして用いられ、それは今日においても否定されているものではないように思われるところ。
そこで、美術の目的でかつ(おそらく美術の範囲で許容される程度の性的要素は許容されるうえで)、「ポルノ」ではないものについては、児童ポルノ……つまるところポルノではないという判断は、法学的にも芸術学的にもかなりまっとうな話に思える。
今回の立石氏の報道を見るに関して、立石氏は何か信念を持った確信犯のように思えて仕方がないし、結果的に少女ヌードそのものは児童ポルノではないらしいという、立石氏の信念は立証されたようだ(ただし、一部のVTRについては児童ポルノだと警察は認定したようだが)。
芸術のモチーフとして少女や少年の裸体を描きたいという欲求は、表現者であれば持ちうる話であるようにも思え、かつ、いわゆる「ポルノ」ではない美術の範囲のモチーフになることについて、当人や保護者が了承しているような場合は、おそらく現代においても「ポルノ」ではないのだから違法ではない、という論理は成り立っているようで、これは芸術表現の観点からすれば非常に喜ばしい結果だったのではないかと思う。
もちろん、芸術を盾にして、芸術無罪のように無法なことをすることは許されるべきではないが、少年少女の裸体を「悪」のような烙印を押して封殺することは、そもそも人間が裸体で生まれてくることからしても、不自然であると思われるし、「性」と「ポルノ」は違うという観点からも、峻別は必要であると思われる。
その点から、埼玉県警がサイト全体を封鎖しなかったことは、よく芸術を考えており、すごいなと思った次第でした。
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