川本直氏『「男の娘」たち』発売に寄せて。


川本直さんの『「男の娘」たち』の発売が決定しました。9/18発売予定です。様々な「男の娘」に焦点を当てた一作です。 わたしが学園祭の男女不問ミスコンに女性を差し置いて女装姿で優勝するという、それこそ、漫画やアニメの主人公のような青春を駆け抜けた、ちょうどそのときのインタビューが掲載されています。

「男の娘」たち

私が思うに、2010年代というのは、3次元の男の娘文化が花開いた時代のように思えます。Twitterのようなウェブサービスも、それまで一部の通の方たちのものだったものが、ちょうどこの頃活気づいたように思えます。私がミスコンで優勝したのも2011年の秋でした。

たとえばふみふみこさんの『ぼくらのへんたい』などは、2012年の作品ですが、これはナマの女装者に焦点を当てた3次元的なテーマを、少女漫画チックなファンタジーの世界に落とし込んだグロテスクな作品であるわけです。ここに、それまでの趣味女装に代表される「ナマ」の世界と、二次元的な「男の娘」の世界が混淆している様子が描かれているのです。

これらに先駆けた、『ゆびさきミルクティー』は2003年の作品でありますが、こちらは理想的な「ナマの女性」と第二次性徴および男性の欲望の顕現による「男性化」との対立を描いております。ちょうどこのころ、インターネットが普及し始めました。さらにそれに先駆けた『バーコードファイター』(1992年)はでは、現代的に言うと性同一性障害の男の娘が、ありのままを愛されることが肯定された作品であります。元祖男の娘、『ストップ!!ひばりくん!』も忘れてはいけませんが、彼は1980年代当時「オカマ」のトリックスターとして描かれていますし、『プラナス・ガール』がその焼き直しであるかのように、女装キャラ→道化・コメディ としての立場を作り出した側面も無視できないでしょう。

1990年以降は、脱ひばりくんの時代であるわけです。ストップ!!ひばりくん!では、主人公が女装者であることは秘密にされていますが、プラナス・ガールでは、主人公自らが女装者であることを暴露し、それが自然に周囲から受け入れられているという変化があるのです。

さて、このようなフィクション作品の変遷を鑑みても、2010年代は、2003年(WinXPSP1)ごろから爆発的に普及したインターネット世代、つまり、虚構的な世界と現実的世界が融合しつつあった結果としての、男の娘の時代となり得たのではないかと思えるのです。そのような世界観では、旧来の、ゲイカルチュアや、趣味女装の延長という文脈で、ポップな活動を繰り広げる、リアル女装者、リアル男の娘を語ることは、おそらく不適当でしょう。本書では、いわゆるオカマさん的な女装者ではなく、さも当然のように女装をするような方がたくさん登場します。それを、ありのまま、素直な視点で切り取ったのではと思います。(似たようなものに、朝日新聞の企画記事(Kindle版あり)がありましたね。)

そのような、2010年代の女装を語るに、本作はきっと必携の書になるのでは、と期待に胸を膨らませているわけです。(まだよんでないよ!)